これらの投稿は、元TBS記者から性的暴行を受けたと主張する伊藤さんについて、「枕営業の失敗ですよね」「自分の望みが叶わないと相手をレイプ呼ばわりした卑怯者」などと誹謗中傷するものだった。 伊藤さんは、杉田議員がこうしたツイートに「いいね」を押すことで、誹謗中傷を「煽る」様子を目にし、恐怖心を抱くなどの精神的苦痛を被ったと主張した。 しかし、1審判決は伊藤さんの訴えを棄却。「いいね」は好意的感情や賛意を示す以外にも、ブックマークなどとして用いられることもあり、仮に感情を示すものだとしても、その対象や程度を特定できない「非常に抽象的、多義的な表現行為」だとした。

「名誉感情を害する意図を持った行為」

一方、2審判決は「いいね」を押す目的は様々であることを認めた上で、ツイート内容や、伊藤さんと杉田さんのそれまでの関係から「いいね」の目的を認定できると判断。 「いいね」された多くのツイートが「さしたる根拠もなく、伊藤さんが性被害を受けたとの事実を否定」した上で、伊藤さんを侮辱するものであることや、杉田議員が過去にも伊藤さんを非難してきた経緯があることを踏まえると、「名誉感情を害する意図」を持って「いいね」したと認定できるとした。 さらに、杉田議員が11万人のフォロワー(現在は約27万人)を持つ現役の国会議員であることから、「その発言などには一般人とは容易に比較し得ない影響力がある」として、今回争われた「いいね」も「社会通念上、許される限度を超える侮辱行為だと認めることができる」とした。

「特定の事例における特定の判断」

伊藤さんは会見で「『いいね』は指先一つでできてしまう簡単な行為ですが、自分に対する誹謗中傷の言葉にハートをどんどんつけられるだけで、どれだけ追い詰められ、崖っぷちに立たされたような気持ちになるか、私は身をもって体験しました」と、当時の心境を振り返った。 「『いいね』は本当に些細なアクションかもしれませんが、その行動には意図があり、名誉感情を害する意図があったと認められたのは、画期的だと思います」と評価した。 一方、伊藤さんの代理人の佃克彦弁護士は、判決が持つ影響力について「人の悪口に『いいね』をすれば、直ちに違法になるということではない」と強調した。 今回の判決は「特定の事例における特定の判断」だと言い、伊藤さんと杉田議員の背景や、杉田議員が社会的な影響力を持つ国会議員であることなどが、大きな判断要素になっていると説明した。 なお、朝日新聞によると、杉田氏の事務所は「原審と異なる判断をされたことから、判決内容をよく精査し、対応を検討します」とコメントしている。